命令に悩むビジネスマン

「本当に上司の命令は絶対なの?」って考えたことありませんか?
職場では「上司の命令は絶対だ」という考え方が一般的ですが、果たして本当にそうですか?

このフレーズには一見して疑いようのない真実のように思えますが、実際には様々な視点から考慮する必要があります。
今回は「上司の命令は絶対なのか?」という問いについて考えてみましょう。

 組織の視点から見た「命令の絶対性」

まず、組織の視点から見れば、上司の命令が絶対であるとは、以下の理由から支持されています。
1. 統制と秩序の維持:組織内の統制と秩序が保たれる。効率的な業務遂行が可能になる。
2. 責任の所在:上司は自分の命令に対して責任を負っている。命令に従わない部下がいると、組織全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼす。
3. 迅速な意思決定:無駄な議論や遅延を避け、スピーディに対応できる。
以下、ひとつずつ見て行きます。

1. 統制と秩序の維持:上司の命令が絶対であることで、組織内の統制と秩序が保たれる。全員が同じ方向に向かって動くことで、効率的な業務遂行が可能になる。
これはよくある主張です。特に上司が部下をマネジメント(管理)すると言った場合に、必ずこの命令について議論されます。
いわゆる『会社の決定には従ってもらうしかない。従えないのなら辞めてもらうしかない。』という主張です。
『部下がなかなか言うことを聞かないんだ~!』と愚痴をこぼす上司が好んで言う言葉ですね。
反対意見を言う部下に対して「そんなこと言っていたら組織が動かなくなる!」と組織の機能不全を持ち出して命令を飲むようにゴリ押ししてきます。
2. 責任の所在:上司は自分の命令に対して責任を負っている。命令に従わない部下がいると、責任の所在が曖昧になり、組織全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性がある。
そう、命令の責任は上司にあるのです。部下ではありません。
命令を出したその結果の責任は上司が取ります。
部下が命令に従っても従わなくても、その責任は上司が取ります。
部下が命令に従った時だけ責任を取り、部下が命令に従わなかった時には部下に責任を取らせるというものではありません。
ところが日本の会社のほとんどの上司が命令に従わなかったことに対する責任を部下に押しつけています。
責任とは言い換えれば成果・結果のことです。
つまり良い結果が出た時に上司は自分の手柄とし、悪い結果が出た時に部下のせいにしています。
これは「悪い結果の責任を負うつもりはございません!」という宣言です。
そのような上司に喜んでついて行く部下がいるでしょうか?
3. 迅速な意思決定:組織は迅速な意思決定が求められる。上司の命令が絶対であることで、無駄な議論や遅延を避け、スピーディに対応できる。
確かにスピードは大切です。
変化の激しい現代においてはスピード感を持って物事を進めていくことは大切です。
「いちいち部下の反対意見を聞いていたのではいつまでたっても仕事は進まない、他社に負けてしまう!」という主張です。

 部下の視点から見た「命令の絶対性」

一方で、部下の視点から見た場合、上司の命令が絶対であることには疑問の生じることもあります。部下の立場から考えて見ましょう。
1. 命令の妥当性:上司の命令が常に正しいとは限らない。
2. 自主性の尊重:部下の意見やアイデアを尊重すると、より創造的で効果的な解決策が生まれる。
3. モチベーションの維持:部下が自分の考えや意見を無視されると、モチベーションが低下する。

1. 命令の妥当性:上司の命令が常に正しいとは限りません。不合理な命令や倫理的に問題のある指示に接すると、部下は悩みます。
そのような時に水戸黄門の印籠のように「上司の命令は絶対です!」と言われると『ははぁ~!』と平服するしかなくなります。
かといって部下が命令に従っているのかと言えばそうではなく、ただ「従っているフリ」をしているだけになります。
これってとてもまずい状況です。
2. 自主性の尊重:上司が部下の意見やアイデアを尊重し、柔軟に対応してくれると、より創造的で効果的な解決策が生まれます。
社員が自主的に動くようになると会社の業績は一気に伸びます。ところが「上司の命令は絶対だ!」といって服従を強要すると、ただ言われたことだけやる無気力社員が出来上がります。
社員は「こうしたらもっと良くなるのに!」という想いを心の中に秘めています。
しかしそれを表に出すことは滅多にありません。
「この上司は私の意見を聞いてくれる人なのだろうか?」ということをいつも気にかけています。
3. モチベーションの維持:「自分の考えは尊重されている!」と感じると社員はやる気を出して働いてくれます。
反対に自分の考えや意見が無視されたと感じると、モ部下のチベーションは一気に低下します。

上司としての心構え

「泣いて馬謖を斬る(ないてばしょくをきる)」という故事があります。
中国、三国時代、蜀(しょく)が魏(ぎ)との戦いで、馬謖(ばしょく)が命令にそむいて大敗しました。この時司令官の諸葛孔明(しょかつこうめい)は軍律違反を理由に涙をふるって馬謖を斬罪に処しました。馬謖は公明が最も信頼を置いていた部下だったからです。

そもそも命令とは絶対的なものなのです。
太平洋戦争時にもこんな話があります。
東南アジアでのある作戦の時、司令部は2つの大隊にそれぞれ命令を出しました。
ところが一つの大隊の隊長が「こんな命令飲めるか!」と従いませんでした。
その結果もう一方の大隊は作戦に失敗し壊滅。
援軍が来なかったからです。
命令はその理由の全てを説明することは出来ません。
一つの命令が他の命令と相互に関係しているからです。

会社の経営も同じです。
会社は命令の全ての意味を部下に説明することは出来ません。
説明することが出来ない上で命令を出さなければならないのです。
だから「会社の命令は絶対!」なのです。

一方、上司が「会社の命令は絶対である!」と部下に教えさとすだけでは組織を運営することは出来ません。
それでは部下が付いて来ることが出来ないからです。
「会社の命令は絶対だ!」という言葉は部下に会社への服従を強要するものではなく、上司が自らのおこないを戒めるための心構えなのです。

「あなたの命令に従わない部下はどんなにかわいい優秀な部下でも処分しなければならないんだよ!」という上司の覚悟を強調した言葉なのです。

 まとめ

今回は「上司の命令は絶対なのか?」という問いについて考えて見ました。
命令は部下が従っても従わなくても責任は上司にあるんでしたね。
命令は部下に服従を強要するものではなく上司の部下に対する心構えでした。

命令に従わない部下は処分するしかありません。
なぜなら、命令は絶対だからです。
あなたは部下を処分したいですか?
したくないなら別の方法を考えるしかありません。
実は組織を運営するために命令は必要ありません。
いや、むしろ命令しない方が組織は上手く回ります。

理念を共有するだけで大丈夫です。
理念とは「我々の会社は〇〇を目指します!」と方向性を示すことです。
するとそれに賛同する社員は主体的に行動し、賛同したくない社員は会社を自主的に去ってくれます。
上司のするべき最も大切なことは命令を出すことではなく、会社の方向性を示すことです。

次回は会社の方向性の示し方についてお話しします。